『MS-X』(エムエスエックス)は、『モビルスーツバリエーション』の続編で、劇中に登場しない「幻のバリエーション」といわれるモビルスーツを商品展開する予定だった企画名のこと。「MS-X」とはモビルスーツペズン (MOBILE SUIT PEZN) の略であるとされる。『機動戦士ガンダムMS-X』ともいい、実際にプラモデルが発売された場合、パッケージにはこちらの表記が使われたと推測される。
『モビルスーツバリエーション』は第3期シリーズの商品展開が終了した時点で、それまでにメインで発表されたモビルスーツがほぼ全て商品化されてしまい展開に行き詰っていた。さらにアニメ『機動戦士Ζガンダム』の放映が検討されはじめ、それまでの繋ぎという意味も持たされることとなったために全体的なてこ入れが必要となり、新シリーズとして『MS-X』を展開させることとなった。
メカデザイン及び設定は大河原邦男が、ストーリーは新たにアニメ『機動戦士ガンダム』のメインライターの1人の星山博之が担当することとなった。「ジオン公国軍の小惑星基地ペズンで行われている兵器開発プロジェクトを調査するため、地球連邦軍はデン・バザーク大佐に調査チームを結成させ派遣した」というストーリープランが立てられ、『テレビマガジン』や『コミックボンボン』にて模型連載が開始された。
ジオン側のモビルスーツの名称は、富野喜幸(現:富野由悠季)監督がテレビシリーズ『機動戦士ガンダム』制作中に書いた全52話構想を記したメモ(通称トミノメモ)にある番組に登場しなかったモビルスーツの名称を流用しているが、名称以外の設定はトミノメモとはほとんど共通していない。そのためか、アニメ『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』に同じ名称を持つモビルスーツが登場し、『MS-X』シリーズのモビルスーツは無理やり名称が変更されてしまった。ガルバルディαに至ってはガルバルディβに似せるためのマスクまで追加にデザインされている。
また、このシリーズではモビルスーツのほかにもバストライナーやスキウレといった既存のモビルスーツ(のプラモデル)と組み合わせる事が出来る、砲台や輸送機の商品化も検討され、デザインが起こされた。スキウレはモビルアーマービグロのメガ粒子砲を砲台としてザク等が取りまわし出来るようにしたものだった。
結局、各モビルスーツは木型(モックアップ)まで製作されていたものの、企画発表の半年後、『機動戦士ガンダム』の続編として『機動戦士Ζガンダム』のアニメ化が正式に決定し、商品の開発もそちらに集中することとなったため、『MS-X』のシリーズ展開は中止され、『テレビマガジン』『コミックボンボン』などでの連載も中断された。
ただし企画としては頓挫したが、設定自体はガンダムの歴史の中に組み込まれ、一部のモビルスーツは後のガンダムシリーズに登場している。また近年では、ガンダムを扱ったゲーム作品のユニットとしての登場や、カトキハジメによるリファインデザインされた玩具『GUNDAM FIX FIGURATION』『ZEONOGRAPHY』などで商品化されている。